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ている。このことは、空港島が魚礁としての機能を十分発揮しているものと考える。
5-3 護岸別付着生物
(1)空港島護岸と大阪湾周辺の護岸に付着する生物を比較してその類似度を求めた。それによれば1989年の護岸概成直後は空港島護岸のどの点も大阪湾奥の護岸に類似していた。1992年には空港島の直立護岸は大阪湾奥の書岸に対する類似性がより高く、傾斜護岸は淡路島の護岸に類似するようになった。
(2)付着生物と波浪の関係
詞査点別波浪(波数)と付着生物の総湿重量との関係(Fig-9)から、51cm以上の波数は調査点???でやや多いが、湿重量の変動が大きい。調査点?では、50cm未満の波浪の頻度は少ない特徴があるが、他の測点に比べて付着動物が多く植物は小さい。一方、波高が101cm以上では調査点??で波数が増加すると湿重量が減少する傾向が認められた(Fig-10)。また、波高51cm以上でも調査点?で同様の傾向があった。特に、最も波当たりの強い調査点?では波数とともに湿重量が減少する傾向が題著に認められた。

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Fig-9 Relationship between the wet weight of benthic animal and the number of waves touching seawall of 5 stations. (Waves height than 50 cm)

(3)光環境
日射量と護岸別光強度の相対比較から護岸別の相対日射量(海表面)を求めて付着植物の総湿重量の関係を見た。1m層はバラツキが大きいが正の相関関係にある。調査点?では海水面の相対日射量.付着植物の総湿重量ともに小さい。調査点?は相対日射量、付着植物の総混重量ともに多いがその変動が太さい。調査点??は調査点?と?の中問にあった。また、5m層では調査点?で相対目射量が弱く湿重量も僅かであった。

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Fig-10 Relationship between the wet weight of benthic animal and the number of waves touching seawall of 5 stations. (Waves height than 101cm)

6. まとめ

空港島護岸及びその周辺海域の生物について、当社の調査結果に基づいて述べた。その中で特に空港島護岸に着目すると、空港島護岸周辺に約23haの海藻が着生しており、大阪湾の貴重な農場として生物の再生産に寄与するものと考える。また、当該海域には113種類の魚介類が蝟集して経年的に多様化している。このことは、空港島護岸が魚介類の棲み家、産卵、生育の場としての魚礁効果を発揮しているものと考える。一方、空港島護岸の付着生物と大阪湾沿岸部の生物相を比較すれば、傾斜護岸が生物相の豊富な淡路島書岸に類似してきている。
このように、空港島に創出された新たな生態系は建設前のプランクトンを中心とした単純な構造から、より複雑な構造へと変化して多様性に富む生物権造が生まれているものと考える。また、付着生物の着生は、波浪と光環境の密接な関係が認められた。

 

 

 

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